拝啓、冴えない僕たちへ。
他の何かのキラキラの衣を借りて、んで自分よりイケてないやつらを心のどこかで笑って、イケてるやつらの粗探しをして、自分自身は形のない澱のようなものに縛り付けられている。結局どこにも行けないでいる。
そしてなおかつ、そんな自分への葛藤や嫌悪を忘れて、なんかこう、さなぎの中に閉じこもるみたいに生きている。
そんな「僕」たちへ。
銀杏BOYZ/エンジェルベイビー
僕が銀杏BOYZを初めて聴いたのは三年前くらい、このエンジェルベイビーという曲に出会った時だった。
ひとまずPVが衝撃だった。小学生のころ公園に濡れそぼつエロ本を見つけたときとおんなじ感じの衝撃だった。
ひで~PV。
ハゲたオヤジが狂ってしまって、町中を暴れまわる。最終的に少女の自転車でE.T.よろしく宙を駆ける。
いや、ひでえPVだ。
「今夜…セックスしようか」なんてセリフ、ダメだろ。
うーん、でも、でも、なんというか「純粋」な感じがするんだ。
冴えない少年、冴えないオッサン。どうしようもない欲求。
ヘッドフォンを壊されて、スピーカーから流れだす音楽。ボロボロでぐちゃぐちゃでサイテーな中から、ロックンロールが流れだす。
イントロからアウトロまでの4分45秒間。冴えない登場人物も、それを見て聴いてる冴えない俺らも結局銀杏BOYZを聴いていただけなんだ。
ロックンロールは世界を変える。そう歌われている。
結局4分45秒間、俺らは銀杏BOYZを聴いていただけで、俺らは年収1000万円になったわけでも、テレビに出てちやほやされたわけでもない。
ヘッドフォンを外せばまたカラーみたいなモノクロの世界が眼前に広がってる。
だけど、ロックンロールは世界を変える。ロックンロールは世界を変えるのだ。
まるで時間が止まったみたいだよ
気づいたらあの娘を思ってた
夜の静けさを切り裂くように
スピーカーからロックは僕に叫んだ
スピーカーからロックは僕に叫んだという歌詞が最高だ。ロックは叫ぶのだ。
俺は18年生きてきて、だいたい16年目くらいにロックンロールを聴いて、それから俺の価値観は壊されてしまった。ステージの上でロックはさけぶのである。
ロックンロールは世界を変える。
あるいは変えてほしいとさえない俺らは願うのだ。
ここにしかないどこかへ
この歌詞も秀逸で、頭の中にゴツーンとぶつかってくる。
ここではないどこかへ、じゃないんだ、ここではないどこかじゃないんだ、ここにしかないんだという、冴えない俺らを肯定するような言葉だ。
いいね、ここにしかないどこかへ、行けたらいいねとすごく思う。