「おい!いい加減仲間を傷つけるのはやめろ!…お前、俺らとともに戦った日々を、忘れたのかよ…!」
「フッ、なんのことかな?私はもともと悪魔王メッチャアクマ様のしもべ…。お前らのような虫けらどもと馴れ合うつもりはない!」
「思い出せないなら…思い出させてやる!食らえ!魂の一撃!!!」
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
「はぁ、はぁ・・・やったか・・・?」
「ううっ・・・俺は・・・ウッ・・・!」
「ど、どうした?!」
「思い・・・出した!」
「まさか・・・記憶を取り戻したのか・・・!?」
「ああ・・・。思い出したよ。ハッキリとな。」
「よかった・・・!」
「お前、貸した6万円、いつ返してくれんの?」
「・・・・・・・・」
「クッ・・・まだ記憶が不安定なのか・・・」
「オイ。」
「個人の記憶まで好き勝手に改竄しやがって…許せないぞ悪魔王…!!」
「いやなんかだんだん全部思い出してきたわ。お前の労働条件悪すぎてリクナビで転職したんだったわ俺」
「クソッ・・・今助けてやる・・・今度はもっと魔力を込めて・・・」
「いや死ぬから。やめて?」
「食らえ!!魂の一撃!!!」
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「はぁ、はぁ・・・どうだ、思い出したか・・・この一撃で・・・」
「ウッ・・・お、俺は一体・・・」
「大丈夫か!六万円は無事に返したあの時を思い出したのか!?」
「思い・・・出した!」
「いや返せよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「許せねぇ・・・悪魔王・・・」
「お前だよ。何サラッと記憶すり替えようとしてんだよ。返せよ」
「なぁ・・・いい加減思い出してくれよ・・・」
「ピンピンだよ。記憶ピンピンだよ。三日前の晩御飯まで思い出せるよ」
「どうしてだ・・・内部分裂を狙っているのか・・・?」
「お前だよ」
「クソ・・・このままじゃ悪魔王を倒して学生ローンを返そうと思ってた俺の計画が・・・」
「普通に社会の底辺じゃないか」
「最初はパチスロに使うために5万借りただけだったのに・・・これも悪魔王の策略に違いない・・・」
「バイトしたり、親に少し工面してもらえよ」
「・・・・・・」
「食らえ!魂の一撃!!!!」
「正論言われるとキレるタイプの人だこの人!!!!」
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
「はぁ、はぁ・・・どうだ、思い出したか・・・この一撃で・・・」
「ウッ・・・!俺は・・・一体・・・・」
「お前・・・記憶が戻ったのか・・・!?」
「旅の給料も滞納せず、完全週休二日制、アットホームで風通しのいいパーティ、馬車や宿などの交通費、宿泊費給付、理想の職場環境のあの日を思い出したのか・・・!?」
「嘘つくなよ」
「・・・・・・・」
「?????????????」
「嘘・・・・?」
「オイ」
「やっぱり、悪魔王に記憶を操作されて・・・」
「ねえよ」
「うちは確かに中小パーティだけどさ、そういうところはしっかりやってるんだけど?」
「ねえよ。俺が新入りの時、戦闘魔法が使えるからって理由で毎回休みなくダンジョン連れてかれて、魔力が切れて魔物にボコボコにされたとき、労災降りたか?」
「それは個人の能力不足だし、いまさらそんな話をされてもねえ・・・君、うちのパーティに攻撃してたんだよ?さっきまで」
「やっぱヤバいなコイツ。あと給料三か月分払えよ。六万も返せ」
「????」
「???????」
「食らえ!魂の一撃!!!!!」
「やっぱ転職して正解だったわ」
おわり