言いたいこと以外言わないソレ

言いたいこと以外のことを言わない文章の集まりです。

森見登美彦が好きだった【#2 ASIAN KUNG-FU GENERATION「荒野を歩け」】

 

森見登美彦が好きだった。

 

中学生の、かつて小説家になりたいと思っていたころ、まず森見登美彦の沼にハマった。

 

平均的な中二病だったからギリシア神話とかクトゥルフ神話が好きだった。

 

神話…神話…とGoogle検索を這いずり回っていた正月明けのころに、検索結果にヒットした四畳半神話大系の放つ並々ならぬタイトルの「良(よ)」に浮かされて、そこから森見登美彦にハマった。

 

文章の各所に鉱石のように散りばめられている、文語的でいささか堅い表現が「難しい言葉を使いたくなる期」の僕にクリーンヒットした。

使う言葉は決して平易ではないのだけれど、筆致はいたって豪快だ。勢いに呑み込まれるように四畳半神話体系を読破してしまった。

 

いままで読んできたどんな作品とも違う妙な熱気が体じゅうに、作品を伝って伝播しているのを感じた。

 

続いて有頂天家族夜は短し歩けよ乙女ペンギン・ハイウェイ、新訳走れメロスを読んだ。

 

ぐんぐんハマっていった。

 

有頂天家族は雨の日にリュックに入れていたからずぶずぶになってしまった。それでもかぺかぺのページを何度も捲った。

 

ペンギン・ハイウェイのアオヤマ少年に憧れてノートを作った。結局半分も書かずに飽きてしまった。もう少し書いていたらお姉さんがペンギンを出してくれていたろうか。

 

新訳走れメロスが原作よりも大好きだった。ひねくれ過ぎている登場人物が僕にひしひしと影響を与えていった。新訳山月記も好きだった。

 

 

夜も短し歩けよ乙女の映画が公開された。僕の大好きな星野源と大好きな森見登美彦と大好きなヨーロッパ企画のコラボだった。

四畳半神話大系のアニメを担当したのがヨーロッパ企画で、更にその主題歌がアジカンだった。今までハマってきた全てがそこに詰まっている映画だった。

 

当時「逃げるは恥だが役に立つ」の放送が終わって、人気大絶頂だった星野源が声優で主演と来たもんだから、めざましテレビとかZIPとかでバシバシ特集されていた。期待がグングン高まるばかりだった。

 

 

 

 

でも結局、僕は「夜は短し」を見に行かなかった。

 

 

 

youtu.be

 

 

結局映画「夜は短し」を初めて観たのは高校生の頃になってからだった。

 

高校生になってから、メッキリ小説を読まなくなっていた。何冊かは読んだが、中学生のころほどじゃなかった。

 

財力も中学生に比べたらあるはずなのに、たった千円札一枚を握りしめてコーチャンフォー(北海道のデカい優良書店)に向かったあの頃のほうが「本」という存在が尊いものだった。

 

この曲は僕にとってなにか追憶的なものだ。回想みたいなものだ。

この曲を聴くとどうしても森見登美彦が描いた世界が出てくる。アジカンは天才だ。どうしてこんなに人の世界を紐づけて僕にぶつけてくるのだ。

 

修学旅行で鴨川デルタを見ておくべきだった。糺の森にも、下鴨神社にも行っておくべきだった。

 

幸いまだ僕は学生だから、きっともう少し見に行く機会はあるだろう。行かなきゃと思う。

 

皆さんにもきっとこういう、追憶、てきな曲が何曲かあると思う。そういう曲って貴重だから、忘れてどっかにいっちゃうまえに、いま探して聴いてみてほしい。