言いたいこと以外言わないソレ

言いたいこと以外のことを言わない文章の集まりです。

近況報告(完成)−改訂版(要訂正)最終決定.docx

頭皮を指の腹で擦ると塩ビ管の匂いがした。幼い頃父の勤めていた会社で嗅いだことのあるような匂いだった。

4月はあっという間に過ぎていった。宣言したことの体感1割も達成できない日々が過ぎていった。そのたびに屈折した感情が折り重なって仄暗い地層を形成していった。

 

帰り道、冗談じゃなく千回くらい聴いてきた曲がイヤホンから爆音で流れ出してきた。ここで立ち止まってしまいたくなった。もう、膝から崩れ落ちて、アスファルトの人工的な冷たさに体熱を奪われながら死んでしまいたくなった。

名作アニメ映画、火垂るの墓の冒頭は、こうである。「昭和29年9月21日夜。ぼくは死んだ」。亡霊となった主人公清太が駅の柱にもたれかかっていて、しかし周りの人々は誰も気に留めずにそのそばを足早に通過していく。

それだ、そんな感じの気分だった。時として悲哀に満ちた映画の主人公になりたくなることもあるのだ。せめてこの喜劇が成就しないのであれば、悲劇のヒロインにならせてくれ。

 

でも実際は立ち止まらずに、なぜか興奮が沸き立つ脳みそを必死に説得しながらあるいていくのだった。

サビのない曲みたいな人生だけど、いまここがAメロであって欲しいなと思いながら。