言いたいこと以外言わないソレ

言いたいこと以外のことを言わない文章の集まりです。

サンドリヨン

 自己嫌悪と他者嫌悪の丁度あいだの感情である。他者への嫌悪というのは、自己の中に存在する(または潜在している)部分への否定も同時に引き起こす。したがって、自己嫌悪と他者嫌悪の丁度あいだの感情である。

 反射的に、俗世的な価値観に顔をしかめることが多くなってきてしまっている。前よりも、「俺を解るな」という感情が強くなり、そしてさらにそれよりも「俺を解ってくれ」という感情が強烈なものになっている。

 要するに傲慢である。ここ最近のテーマである。純朴さを失って、ただ熱烈さだけがこの肝臓に蓄積されている。自分からわかってて正しさに背信しながら、自分の顔が向いている方向に正しさがあると思い込もうとしている。

 わかっていても止められない。自家中毒というか、呼吸困難というか、喉の奥のほうに濾過装置みたいなものがついていて、吸い込む空気から本当に必要なデカい「本質」みたいなものを濾し取ってしまっているのかもしれない。

 アンタがクソ嫌いだ、と思わないように生きてきたが、その代わりに黙って俯いて、相手に見えなくした眼を侮蔑の色にぬるりとかえるような生き方になってきているのかもしれない。やはり表裏一体なもので、そんな自分がクソ嫌いである。

 自信の無さというものを履き違えているのかもしれない。というか、履き違えているのかもしれない。全てを。俺の靴は本当は、12時ごとに消失を繰り返すガラスのアレだったのかもしれない。

 シンデレラは灰をかぶっている。シャルル・ペローの原作『サンドリヨン』に影響を受けたグリム童話『灰かぶり』では、靴に足が入らず足を切り落とされた義姉、自殺した主人を見て、にっこりとシンデレラはわらっている。