言いたいこと以外言わないソレ

言いたいこと以外のことを言わない文章の集まりです。

レベル上げ

小学校低学年の頃、そこまで裕福というわけでもない我が家にニンテンドーDSは無く、僕は両親のお古である緑色のゲームボーイで遊んでいた。

紛うことなき、正真正銘初代ポケモン赤・緑。僕のゲーム原体験はそこから始まる。

 

電子音と粗いドットで描かれるポケモンという生命体。クラスのみんなが遊んでいるポケモンとはちょっと違ったけど、間違いなく僕はワクワクしていた。純心で、臆病に、ポケットモンスターというゲームを楽しんでいた。

最初に選んだヒトカゲ。草むらで見つけたピジョントキワの森で一生懸命探したピカチュウ。壁役にしていたけど愛着はあったキャタピー。全部がぬくい温度を保ったまま、それらを今でも覚えている。

最初は、目と目を合わせると奇怪なビープ音を鳴らして勝負を挑んでくる敵プレーヤーにも怯えていた。妹とか、母に見ていてもらわないと、怖くて仕方なかった。タケシにも一度負けた。目の前が真っ暗になる、という表現が怖かったから、もうポケモンなんてやめようかとも思った。

 

しかし次第になれてきた。自分と苦楽を共にしたポケモンが徐々に成長し、新しい技を覚える。気づけば一人で野良トレーナーとも戦えるようになっていた。すくすくと育ち、どんどんと歩を進めていった。

 

――が、途中のダンジョンであるおつきみ山を越えられなかった。野良トレーナーも、雑魚敵も手ごわくなってきて、今までジムリーダーにしか負けていなかったのだが、敗北の回数もじわじわ増えてきた。また恐怖が再来した。子供特有の、出自不明の、恐怖感。

僕は母に相談した、どうやったら勝てるのか?と。母の答えは単純明快だった。

「今までどんどん進んできたからね、レベル上げ、しなきゃ。草むらのポケモンたくさん倒して、レベル上げ。」

 

 

それが僕とレベル上げの出会いだった。成り行きで漠然とポケモンの世界を闊歩してきた僕にとって、レベル上げの概念はなんだか必要以上にカッコよかった。

そうか、成り行きでずんずん進んで、周りのレベルが高くなって苦しくなったら、僕もレベル上げしたらいいんだ、と。

 

 

実家にちょっと前まで帰省していて、一人になってそんなことを思い出していた。

 

 

最近、マジで人生が上手いこと立ち行かないな~、なんか100億円くらい落ちていないかなと思うことが増えた。思うどころか言っていた。塾講バイトで生徒に言っていた。は?みたいな反応されたけど本気で思っているからずっと言っている。

 

でも違うなと思った。今「人生」をプレイしてプレイ時間20年くらい経ってるわけだけど、今まで超成り行きでこれをプレイしてきた。

 

そろそろレベル上げの時間が来てるのかな、そう思った。